(続)紅茶の話あれこれ 「一杯の美味しい紅茶」その6

50年来の友人、紅茶人で業界第一人者である荒木安正氏の著作から興味あるエッセンスを抜粋しました。 紅茶への理解を深めていただければ幸甚です。
     (記)日本紅茶協会 元専務理事 清水元(国分寺稲門会)

一杯の美味しい紅茶(その6)

「ベッド・ティー」のお勧め

「ベッド・ティー」(Bed tea)とは[朝、起き抜けに飲む目覚めのティー]のこと。別名「アーリーモーニングティー」(Early morning tea)とも呼ぱれ、当日に必要とされる「エネルギー」(気力、精力)に点火してくれる。つまり、ベッド・ティーを飲むことにより、
(1)睡眠中に失われた水分の補給をし、
(2)香気成分に刺激されて覚醒作用を促進させ、
(3)暖かい茶液の熱とカフェインの効果でからだを暖めてくれ、
(4)新陳代謝を促進させて全身への血行やお通じも良くなり、
(5)個々人の好みで加える甘味料に含まれる糖分は脳内の中枢神経に栄養分を補給し、頭脳の働きを良くする

といったメリットは実に大きい。
 我が国の場合、高級「和式旅館」などで指定した起床時間になると、女中さんが控えの間の襖越しに“お早うございます。お目覚めでしょうか? お茶(緑茶)をお持ち致しましたので‥。”と挨拶をしながら、煎茶などに湯を注いだばかりの急須・茶椀・梅干し・黒文字などをお盆に載せて寝所に差し入れてくれるものだ。
 「おもてなし」といえば、「午後の茶会」「夕食後の団梁のティー」「クリスマスのティー」などなど最適の素敵なシーンが思いつくが、イギリス本国はじめ旧英国植民地などの有力ホテルや、海外での知人宅でいただく「ベッド・ティー」ほど“おもてなしの意義”を深く感じさせてくれるものはなかろう。あなたが外国でのベッド・ティーを未経験ならば、まずは日曜日など休暇の日の朝などに“日覚めのティー”を、ついでに朝食を用意してあなたのベッドサイドに運んでもらうか、自宅で「こだわりのティー」をセルフサービスでいれたりして、ゆるゆるとベッドで飲食することも“口福の一時”と言えよう。
 「ワカルワー、そのお薦めのティーの感激! だけど、一体だれがいれるのヨ~」などと夫婦喧嘩にならないように。

連日お勤めご苦労様のご主人方よ。毎朝、否、せめて休日の朝だけとか、奥方の誕生日の朝だけでも、せいぜい10分間、早めに起きて自分好みの方法で熱々のティーをタップリいれて、愛情たっぷりのティーを夫婦揃って試みて下さい!

      ベッド・ティー

 

終章 結局「ノミュニケーションが大切!」

 人類誕生の歴史を500万年前とすれぱ、昔の「人生わずか50年」から今日は「80年」に訂正してもまさに“一瞬の時”。[アイフォーンやスマホ]などなどペーパーレス時代が進行すればするほど、血の通った“人と人との絆の大切さ”に気づかねばならないでしょう。
 そして、私達がこの世に存命中に忘れてはならない事がある。それは、市中に各種の飲料が満ち溢れている中で「一生涯を通じて飲み続けたとしても、決して他人に迷惑をかけるとことなく、決して飽きることのない最良の飲み物」があるということ。それこそは[Cha / Tea 以外に考えられない]という事実でしょう。そして、その美徳を認識して、広く世間に広報・教宣することこそが、紅茶葉界に関わりをもったわれわれ全員に課せられた大義であり、一人一人がその使命と期待を担っていつとはいえまいか。
 いま、優雅で健康的なイメージをもったヘルシー飲料=紅茶が世界的に人気です。紅茶はポリフェノール(カテキン)、カフェイン、テアニンなどを含み[アンティ・エイジング](抗加齢)にも有効な飲料として注目されている。
また、カップ1杯当りの値段もリーズナプルで、熱湯さえあれぱ誰にでも簡単に飲用ができ、特有の香味は心身をストレスから解放し、リラックスさせリフレッシュさせてくれる。加えて、モノとしての性格が淡泊な故にお茶うけや料理の様々なメニューにも適合し、様々なら楽しみ方が可能である。

 結局は「モノとしての紅茶とその文化の本質」を見極めたうえで、個々人が満足を得てくれるよう「紅茶まわりの文物や情報」(複合的な文化要素)を一つずつ加えながら、まず第二段階は「脳細胞が活性中の80歳までの余生」を大いに楽しんでいただきたい。
 生活者の趣味や嗜好も時流と共に変貌し続けている。発足後、70年以上のJTAと、20年以上の日本TI会は、ハイレベルな感性と才覚・多種多様な特技や専門領域をもつブロだけの特殊な会組織であり、世界の茶業界広しといえども特異な存在である。筆者はCHA(チヤ)の本旨は「一期―会」。その意義を[ふれあいCommunication]、[おもてなしHospitality]、[たしなみAccomplishment]と考える。そこで、
(1)常にヒトと一緒の時間を本気で大切にする、
(2)先輩・後輩、友人・知人といったタテとヨコのきずなを強くすること、
(3)「おいしい紅茶」と共に楽しい会話を試みること、
がポイント。うして「ノミュニケーション」を大いに促進しようではありませんか!

(完)