紅茶にまつわる話を3回に亘りご紹介致しましたが、キーポイントである、紅茶を美味しく飲むには如何したらよいか、“ゴールデンルール”にそってご説明致します。
紅茶の注出法には基本型の①茶葉の上から熱湯を注ぐ、淹茶法(Brewing Method)他に②湯の中に茶葉を投入しての煮出(込)し法(Boiling/Stewing Method)③ティーバッグのような濾過法(Filtering Method)④その他として濃縮、粉末、液体紅茶飲料(RTD)などがあります。ここでは基本型の淹茶法での入れ方について説明します。
日本紅茶協会による紅茶の入れ方
茶漉しネットに適当な量の茶葉を入れて上から湯を注ぐだけでは、単に色付きのお湯でしかなく、飲んだときの紅茶の持つフレーバーやコク味が望めない。これは紅茶の持つおいしい味や香りなどの有効成分が充分出て来ないためで、茶葉をポットの中で熱湯により蒸らすことが大切である。
日本紅茶協会では我が国のライフスタイル、水質、品質レベルなどを勘案して、「日本人が紅茶をおいしく入れるためのヒント、目安(ゴールデンルール)」を策定しました。
リーフティーの入れ方
① 必ず蓋のついたティーポットを使うこと |
② 茶葉の分量はティースプーンで正確に量ること |
③ (水道の蛇口から)汲みたての新鮮な水を強火で沸かし、沸騰直後の勢いのよい熱湯を使うこと |
④ ティーポットの中で茶葉を充分に蒸らすこと |
1.ティーポット
陶磁器製、銀製、ガラス製、ステンレス製、ホーロー製などを使用する。
鉄製のものは紅茶のタンニンと鉄分が化合して紅茶の色が黒ずんでしまうので避けること。形は「熱対流」がスムーズに起こり、茶葉の「ジャンピング」が起こりやすくなるので胴丸でシンプルなものが良い。
2.茶葉の分量
ティーカップ一杯分の標準分量は、茶葉のサイズにより、細かい葉(ブロークンタイプ)は中山1杯(約2.5g~3g)、大きな葉(リーフタイプ)はティースプーン大山1杯(約3g)を目安にする。
紅茶缶などに書いてあることがある「ポットのためのもう1杯(One for the pot)」については、今は茶葉の品質が改良され、日本の水は軟水なので標準量で充分であり、特に必要ではなく、濃いのが好きな方やミルクティーが好きな方はもう1杯を加えても良い。
3.使用する水と熱湯の分量
水は基本的に水道水がよく、蛇口から勢いよく汲み出した新鮮な、空気をいっぱい含んだ水を使用する。日本の水は一部の地域を除き紅茶に適した軟水である。
この水をヤカンで沸かし、香気成分など充分に引き出すために完全に沸騰した時点の熱湯を使うこと。
なお水道水のカルキ臭やトリハロメタンが気になる場合は、2~3分余分に沸かすこと。カルキ臭が抜け、トリハロメタンも気化してしまうと言われている。
なお熱湯を注ぐ時はヤカンをポットに持ってゆくのではなく、「ポットをヤカンの方に持ってゆく(Take the tea pot to the kettle, not vice versa)」こともポイントの1つです。
注いだらすぐに蓋をしてじっくり蒸らすこと。
4.蒸らし時間
蒸らし時間の目安は、細かい葉(ブロークンタイプ)は2.5分~3分で、大きな葉(リーフタイプ)は3分以上です。これは飽くまでも基準であり、お茶の有効成分が充分に抽出されることが大切な要件です。
蒸らしている間など、熱を逃がさないための保温道具としてティーコージーがありますのでポットにかぶせて使用すること。
なお紅茶の味が変化しますのでウォーマーなどの直火にかけないこと。
紅茶が濃く入りすぎた場合はイギリス式では、ホットウォータージャグに熱湯を入れておき茶液を薄めることが出来ます。
出来上がりは清潔な「茶漉しネット」などを使って手早くティーカップに注ぎ分けること。
5.ティーカップについて
紅茶のおいしさはカップに注がれた水色と味及び香りが重要な要素です。
水色の美しさを出すためには、カップの内側はなるべく白く、形は口が大きく広がって、底が浅く、持ちやすく、飲みやすいいものが良い。
ティーバッグの入れ方
ティーバッグは、茶葉を計量する手間を省き、茶殻の後始末を簡便にしたもので、リーフティー同様ゴールデンルールに従ってティーポットやサーバーを使い、汲みたての新鮮な水を強火で沸かして、沸騰直後の勢いの良い熱湯を注ぎ、充分蒸らすこと。
蒸らし時間の目安
CTC茶が主体のティーバッグ = 約1~1.5分
オーソドック茶主体のティーバッグ= 約1.5分~2分
ティーカップやマグカップ等で1杯分を入れる場合は、熱湯を注いだ後で小皿やソーサーで蓋をして蒸らすと良い。
*各社製品に記載の入れ方の要領を参考にして下さい。
アイスティーの入れ方
アイスティーは2倍の濃さの茶液を作ってオンザロック方式で手早く入れるのが最も望ましい。
他に水出し(差し)方式等もあり、また水出し用のティーバッグも市販されている。
オンザロック方式の入れ方
1.標準量の茶葉にホットティーを作る時の半分の量の熱湯を注ぎ、蒸らし時間は2~3分程度で2倍の濃さの紅茶液を作る。(お湯の量は1杯分70ml~80mlが標準)
2.ホットティーを、茶漉しを通して別のポットに移す。
甘みをつける場合はホットティーの時の1.5~2倍のグラニュー糖を完全に溶かす。
(人間の味覚は冷たいと鈍感になるため砂糖は多目で良い。)
3.氷をなるべく細かく砕きグラスにたっぷり入れる。
4.2倍の濃さの紅茶液を氷の上から手早く注ぎ、冷やす。
クリームダウンについて
アイスティーを入れた後に茶液が白く濁る現象で、熱い紅茶液を急激に冷やすと、紅茶液の温度が下がるにつれタンニンとカフェインの複合物が凝固するためである。
この現象をクリームダウンあるいはミルクダウンという。
防ぐ対策としてはタンニンの多い紅茶が発生し易いので、タンニンの含有量の少ない茶葉を選ぶ、中国紅茶のアールグレイ、ニルギリ、セイロンローグロウンなど。
また蒸らし時間を短くすなど工夫すること。
(以上)