2025年1月国分寺句会

俳句同好会(国分寺句会)1月例会(第119回)

俳句同好会(国分寺句会)の2025年1月例会が1月19日(日)12時30分から対面句会方式で開催されました。当日の参加者は講師の安西 篤先生始め7名、欠席投句の6名を含め合計13名の句会となりました。年の初めのため、お昼の弁当を食べながらしばし歓談。ただ、幹事の吉松舞九さんが急遽入院のため欠席となり、静かな句会となりました。(吉松さんは1月末に無事退院)

出席者氏名;安齋篤史(俳号 安西 篤・講師)、赤池秀夫、内田博司、押山うた子、梶原由紀、佐竹茂市郎、森尾秀基(ひでかず) 以上7名

欠席投句: 千原一延(延居)、中村憲一、野部明敬、藤木ひろみ、吉松舞九、眞宅康博(泉舟) 以上6名 欠席;舘外博(爽風)、清水元(星人)

投句数:3句  兼題:「年末・年始の季語一切」(いずれも傍題含む)」

講師選評 安西 篤(俳句結社「海原 KAIGEN」主宰)

◆2025年1月 国分寺句会講師選評 

【特選】

訛りつつすする雑煮の味噌甘し  梶原由紀

 お正月ということで、久しぶりに故郷に帰り、親戚知人を交えて雑煮膳を皆で祝っているのだろう。懐かしい故郷訛りを丸出しにして語り合いなから、頂く雑煮の味噌味の甘さと言ったら、とてもそんじょそこらにあるようなものではない。思わず「うめぇーなあ」と唸らざるを得なかったに違いない。「訛りつつすする」に、味噌味が乗っていく。

【並選】

(一位)

がん共闘の妻と祝いて屠蘇の酔い 吉松舞九

 夫婦揃ってがんを患いながら、新年を迎えた。ささやかなお膳に屠蘇を酌みあって、今年もよろしく、一緒に頑張りましょうと盃を挙げる。少しばかりの屠蘇に早くも酔いながら、ふとこんな時間がいつまで続くやらとも思いつつ、頑張らねばと励まし合う気持ちが通ってくる。「がん共闘」に、夫婦に通ずる気合を感じる。

(二位)

亡き夫のはじめて笑まふ春の夢 藤木ひろみ

 春の夢に、時々亡き夫が出てくることがある。どうもいつもは、生前同様の仏頂面が多いのだが、どういうわけかはじめて笑みこぼるる表情で出てきたことがあった。思いがけないことなので、どういう風の吹き回しなのとすげない返事をしながらも、なにやら目出度いことがありそうで心が温まって来る。本当のことなら良いお正月ですね。

(三位)

一人喰ぶなずな斑の粥柱    押山うた子

 正月十五日にお粥の中に入れて食べる餅のことを粥柱という。一人暮らしでありあわせのものを煮込んでいるせいか、なずな粥も斑模様を描いて粥端が立つ。「一人食ぶ」わびしさが斑の粥柱に通い合っている。

(四位)

皆揃い屠蘇の順番膳始め     中村憲一

 今年も正月には、家族一同揃って屠蘇の膳に着き、年の順に屠蘇による膳始めを行う。今年もどうやら一家の無事を祝って膳始めを行える幸せを思う。「皆揃い」に込めた年寄りの感慨を多としたい。

(五位)

孫娘(まご)の背の鴨居に紛ふ去年今年  野部明敬

 孫娘の成長の速さは、もはや鴨居に背が届かんばかり。もちろん作者はその成長ぶりを頼もしく思っているに違いないが、どこか手の届かぬものになっていく淋しさも感じているのではないか。そんな気持ちが「去年今年」の季語にこめられていよう。「紛ふ」は、気持ちはわかるがちょっと無理な言い方。

(六位)

元気よとつぶやきながら賀状書く  佐竹茂一郎

 年賀状の添え書きには、ほとんど判で押したように「お元気ですか」とある。まさにそれこそが賀状の本意に違いないのだが、それを賀状に書きつつつぶやいている。相手への挨拶を込めての思いともいえよう。

(七位)

風邪引いてそろりと歩む年始め  内田博司

 年の初めというのに風邪をひいて、初詣もそろりと歩むはめとなった。我々の世代ともなれば、もはや珍しい話でもないが、背を丸めてそろりと歩く姿のシマラナイことおびただしい。でも大事に年を迎えよという暗示かと思えば、それもまた一つの年迎えのあり方かもしれぬ。そう思いたい。

(八位)

春永や熊野三山舘燈し      千原延居

 熊野三山は、本宮、新宮、那智の三山が古代以来祀られて来た。鎌倉時代以降は庶民にも広まって、「蟻の熊野詣」と言われるほど全国に展開した。春は四月十五日に、本宮大社のお祭りが行われる。当然参詣客を迎え入れる宿泊施設も賑わい、その模様を「春永や」の季語に合わせて一句ものしたのだろう。三山の舘は一斉に灯をともして息づいている。

(九位)

つくづくと侘しき髪の初鏡    眞宅泉舟

 我々世代に達すると、頭髪の侘しさは争えないもので、初鏡を見るたびに昨年よりも侘しさを託つのも無理はない。寄る年波の厳しい現実を、初鏡から今さらのように見せつけられている。「つくづくと」に宿る境涯感の重さが、「侘しき髪」の軽さを際立たせる。

(十位)

難民に幸多かれと初日の出    赤池秀夫

 近くは能登の難民、そしてウクライナやガザ地区の避難民など、世界にはまだまだ多くの難民がいる。そんな人々の上に今年こそ幸多かれと願わずにはいられない思いを書いている。今さらの思いもあるが、初日の出に今年こその思いを込めて祈らずにはいられない。その姿勢を多としたい。

【自句自解】

梅咲いて卑弥呼くすりと笑みこぼす  安西 篤

 梅の咲いている庭に、古代日本耶馬台国の女王卑弥呼がふっと出てきたことを想像してみた。卑弥呼はクレオパトラ同様に、美人だったに違いなく、男どもを自在に操っていただろう。そんな卑弥呼が梅の咲く庭を一瞥して、くすりと笑った。とたんに庭の様子が華やいだような感じになった。そんな春の夢の一句。

◆講師(安西 篤)詠 3句

初日向そのまま老いの仮想空間(メタバース)                        

せりなずなごぎょうで終わる人の()は            

梅咲いて卑弥呼くすりと笑みこぼす

2025年1月 国分寺句会高得点句 (同点の場合は番号順)

★最高得点句・五点

がん共闘の妻と祝いて屠蘇の酔   舞九

一人喰ぶなずな斑の粥柱      うた子

老いし手の大きく餅を丸めけり   由紀

元気よとつぶやきながら賀状書く  茂市郎

寄鍋や積もる話にすすむ箸     ひろみ

★その他の高得点句・四点

眼福やビルの隙間の初日の出    ひでかず

訛りつつすする雑煮の味噌甘し   由紀

◆2月以降の予定

★2月は通信句会です。

兼題:「春浅し」または「早春」(いずれも傍題を含む)

★3月は以下の通り対面句会を行う予定です。 
日時:3月23日(日) 13:30~16:30
場所:本多公民館 
兼題:未 定

以上