俳句同好会(国分寺句会)の8月例会が開催されました

俳句同好会(国分寺句会)の8月例会が開催されました

俳句同好会(国分寺句会)の2024年8月例会が8月24日(土)午後1時半より4時半まで本多公民館会議室2において開催されました。当日、曇り空の下を参集したのは以下の10名。欠席選句の4名を含めて14名参加の賑やかな句会となりました。

出席者氏名;安齋篤史(俳号 安西 篤・講師)、赤池秀夫、内田博司、押山うた子、

佐竹茂市郎、清水 元(星人)、眞宅康博(泉舟)、野部明敬、

森尾秀喜(ひでかず)、吉松峰夫(舞九)以上10名

欠席選句;千原一延(延居)、梶原由紀、中村憲一、藤木ひろみ 以上4名

欠席;舘 外博(爽風)

投句数:3句  兼題:「終戦記念日」(傍題を含む)

講師選評 安西 篤  《 》内は講師の添削

【特選】

薩摩芋炊き込み一人敗戦忌     押山うた子

 戦中・戦後の食糧難時代、薩摩芋入り炊き込み粥は、しばしば常食となったもの。その体験者ならではの一句。それでも飢えを凌ぐ糧として貴重なものだった。敗戦忌にそれを思い返す度、忘れがちな歴史認識を噛みしめさせられる。ここであえて「一人」という限定は言わずもがな。事実としての共通認識こそ大切なもの。その着眼を買いたい。

《芋粥の炊き込みの日々敗戦忌》として頂く。

【並選】

(一位)

読本に墨の消し跡敗戦忌      吉松 舞九

 たしかに戦時中の国語読本には、軍国主義的記述がなされており、戦後その不都合部分を墨で消して使用された時期がある。そんな読本でも戦後の物資不足下にあっては貴重品として使用されたものだ。これもまた特選句同様のリアルな体験で、戦後八十年の日常感を歴史認識に重ねている。しいて言うなら《読本の》とした方が、時間差感をはっきりさせるように思う。

(二位)

墓石を潤す水や墓洗ふ       藤木ひろみ

 お盆の墓参りで墓石を洗うのは、我が国では慣わしとなっているものだ。その頃の墓石は、暑さに熱せられており、その天辺から水を掛けてやるといかにも気持ちよさそうに、音を立てて石肌に吸われてゆく。墓参者の「どう、さっぱりしたでしょう」という気分ありあり。

(三位)

新涼や父に倣いて拭く仏具     梶原 由紀

 立秋も過ぎてそろそろ涼しさを感じる頃、仏壇の仏具を拭き清めるのは父の慣わしだった。それを受け継ぐように、今、仏具を拭いている。「父に倣いて」には、おそらく亡き父への懐かしさと共にある。その実感は、父の仕草をなぞることで、甦ってくる。

(四位)

妻病みて今はいとおし夏帽子    清水 星人

 妻病む日々は、すでに長期に亘っているのだろう。他出することなく、自宅療養中の身では、夏帽子を着用することもなくなっている。かつて愛用した妻の夏帽子を、妻への思いとともにいとおしんでいる。「今はいとおし」に、元気なころの妻への思いとともに、その命長かれとの思いを込めているのだろう。

(五位)

蝉しぐれ妻の在所の法事かな    内田 博司

 お盆の頃、妻の在所から、恒例の法事の案内が来た。ちょうど蝉しぐれの降りしきる頃なので、しばらく行ってないなと思いつつ、懐かしさとやれやれ億劫なという思いがないまぜになって、しばらく思案しているのだろう。蝉しぐれが、どうすると催促しているかのようだ。

(六位)

畏まり雑音聴きし終戦日      眞宅 泉舟

 終戦時の玉音放送は、たしかに雑音の中で聞き取りにくかった。それだけに天皇の苦衷と恐れ多いという思いが交錯して、皆畏まって、少しでもその真意を受け止めようと、ラジオの前に膝をそろえたものだ。あの日の感動とも無力感とも思える呆然たる何かは、思い出すだに、やりきれない。これが歴史の真実というものなのだろう。、

(七位)

絹一丁たらい底から涼を挙げ    赤池 秀夫

 「絹一丁」とは、絹漉し豆腐をたらいの底から掬い挙げるときの豆腐屋の掛声なのかもしれない。それがいかにも威勢よく、真夏の涼味を誘い出す。よくある景だが、季節感を言い当てている。

(八位)

駅前の長い信号残暑かな      佐竹茂市郎

 駅前の踏切で、長い間信号開けを待っている。そのとき、つくづく今年の残暑は長く暑いなあと感じている。こういう日常の隙間に、季節感はまざまざと忍び寄るものだ。さりげない瞬間に訪れる季節の姿、またそれに感応する人間の気分のたゆたい。

(九位)

見舞いしは昨日の訃報夏の果    森尾ひでかず

 句の文脈を正す例として挙げた。昨日見舞いしたばかりなのに、今日訃報に出会うとは、という思いを句にしたかったのだろう。「昨日の訃報」が事実に反する。題材としては、こういう無常迅速の思いはよくわかる。

《昨夜(きぞ)見舞い今日訃報とや夏の果》

【自句自解】

残暑陳者(のぶれば)鼻毛むしりて送る日々   安西  篤

 残暑見舞いの便りに、「当方無事消光」という決まり文句でなく、すこしおどけて、「鼻毛むしりて送る日々」とやってみた。その前に「残暑陳者」としかつめらしく挨拶してみせたのが、隠し味になっていると思うがどうだろう。               

以上

8月句会 高点句

          (同点の場合は順不同)

最高得点句・7点

読本の墨の消し跡敗戦忌           吉松 舞九

海山も静寂(しじま)覆いて終戦日   眞宅  泉舟

その他の高点句・5点

炎天の無人の街を迷いけり        梶原  由紀   

薩摩芋炊き込み一人敗戦忌        押山うた子   

墓参するふるさとも無き老いの秋   安西  篤   

畏まり雑音聴きし終戦日          眞宅 泉舟   

絹一丁たらい底から涼を挙げ      赤池 秀夫

(以下 略)

9月以降の予定

9月句会は通信句会となります。 

投句締切:9月10日(火) 投句数:3句(幹事まで)  

兼題「台風」(「野分」「二百十日」などの関連季語も可)

以上