2025年4月国分寺句会

俳句同好会(国分寺句会)4月例会(第121回)

俳句同好会(国分寺句会)の2024年4月例会が通信句会方式で開催されました。

参加者は以下の14名でした。
出席者氏名;安齋篤史(俳号 安西 篤・講師)、赤池秀夫、内田博司、押山うた子、
梶原由紀、佐竹茂市郎、清水 元(星人)、眞宅康博(泉舟)、舘 外博(爽風)、千原一延(延居)、中村憲一、野部明敬、森尾秀基(ひでかず)、吉松峰夫(舞九)。欠席選句:藤木ひろみ

投句数:3句  兼題:「花(桜)」一切(傍題含む)
              
講師選評 安西 篤(俳句結社「海原 KAIGEN」主宰)

◆2025年4月国分寺句会選評

【特選】

さくらしべ降るや赤子の目のひらく  梶原由紀

 「さくらしべ降る」とは、桜の花びらが散った後、萼についていた細い蘂や茎が降ること。散り敷いて地面をうすく赤紫に染める。落花とはひと味違う晩春の情趣があつて、花時の人出とは異なる静かな景。その中で、生まれて間もない赤子が、ずっとつぶっていた目をふと開く。それはさくらしべのような細いまなざしで、初めて見るこの世の景を、不思議そうにまじまじとみつめているかのよう。この優しい着想が新鮮。

【並選】

(一位)

弁当に蕗味噌もあり亡母偲ぶ     千原延居

 入試や卒業試験の頃、亡母はよく弁当に蕗味噌を用意してくれた。今にして思えば、亡母は脳への栄養価の高さや消化の良さを配慮した上でのことだろう。あの蕗のほろ苦さに辟易しつつも、亡母の暮らしの知恵に、今さらのごとく衝かれる。それは母恋の味かも。

(二位)

吹き溜まり惜しむよに掃き花終る   清水星人

 桜の花びらの吹き溜まった庭を、いつまでもそのままにしておけず、惜しむように掃き清めて、我が家の庭も花の終わりの時を迎えた。平明な花時の日常の移ろいが、返って心に染みるように刻まれる。

(三位)

受験子の群れて蕾の固きまま     吉松舞九

 受験生たちが志望校の校庭に続々と集ってくる。校庭にある蕾の実態ははっきりしないが、時期的に見て桜と予想できよう。彼らは、緊張のあまり、蕾のような固い表情のまま群れている。蕾はどんな花を開くのだろう、また試験の成り行きにも期待を寄せながら。

(四位)

熊野社や花の間に間に破風飾り  森尾ひでかず

 島根県松江市の熊野大社は、屋根の切妻に破風飾りの装飾がある。それが花の開く間を縫って行われる。熊野社の春を彩る花の風情も鮮やかに。

(五位)

雨足の強き車道に花筏       押山うた子

 雨足の強くなった車道に水溜まりが出来て、そこに散り込んできた櫻が花筏を浮かべている。思いがけない小さなドラマチックな景が生まれて、しばし足を留める車道。

(六位)

われよりも古りし桜木駅舎見ゆ    野部明敬

 句の景としては、自分の年より古くからある桜の木が、駅舎の傍に見えてきたということだろうか。なぜか駅舎そのものの懐かしさを誘うようでもある。

(七位)

夜桜や乱世は今も西郷どん      赤池秀夫

 明治維新の功労者で、文明の精神を深く理解しながら士魂豊かな英傑として、西郷隆盛を今も慕う人々は多い。作者は、夜桜の中で、この世界的な乱世に、西郷のような人がいてくれればとの待望論をいう。境地の句だから、句の順位には馴染まないが、心情的共感からあえて取り上げた次第。

(八位)

瀬に別れ淵にまた沿う花筏      眞宅泉舟

 山中を流れる川を、花筏が幾つか流れてくる。川の瀬で一度別れたものが、淵へきて沿い合い、あたかも戯れるようにまた競い合うように、楽し気に流れゆく花筏。

(九位)

雨がふるフトつくばいの花筏      内田博司

 雨の降る庭の手水鉢に、ふと花筏が浮かんでいて、如何にもあつらえたような感じでピタリとおさまっている。「フト」の片仮名表記は、平仮名にして景に溶け込ませたい。

(十位)

神田川淀み中へ花吹雪        佐竹茂市郎

 神田川の流れの淀みの中へ、花吹雪で拭き寄せられた花びらが吹き溜まっていく。よく見かける景ながら、この場合は花吹雪によって、川の淀みが盛り上がっていくところに焦点を当てている面白さだ。     

◆講師(安西 篤)詠 3句

現世(うつしよ)(うつしよ)を来世より見る花の人

師の背ナを押して金縷(まんさく)梅日和かな

夜桜や今日のあいつを信ぜざる

◆四月句会 高点句

(同点の場合は番号順)

最高得点句・九点

瀬に別れ淵にまた沿う花筏     泉舟

その他の高点句・八点

熊野社や花の間に間に破風飾り  ひでかず

七点句

夜桜やすっと魔の手に引き込まれ  爽風

六点句

吹き溜まり惜しむよに掃き花終わる 星人

春寒し貨物列車の長い列     茂市郎

受験子の群れて蕾の固きまま    舞九

さくらしべ降るや赤子の目のひらく 由紀

五点句

われよりも古りし桜木駅舎見ゆ   明敬

夜桜や甘露の道を尋ねるか   ひでかず

老幹にまだ有るちから花吹雪    星人

雨足の強き車道に花筏      うた子

◆2025年5月以降について

★5月は以下の通り対面句会の予定です。

日時:5月25日(日)午後1時半~4時半

場所:本多公民館 会議室2

兼題:未定

★6月は通信句会の予定です。

以上