国分寺句会

俳句同好会(国分寺句会)12月例会(第118回)

俳句同好会(国分寺句会)の2024年12月例会が通信句会方式で開催されました。

参加者は以下の15名でした。
出席者氏名;安齋篤史(俳号 安西 篤・講師)、赤池秀夫、内田博司、押山うた子、
梶原由紀、佐竹茂市郎、清水 元(星人)、眞宅康博(泉舟)、舘 外博(爽風)、千原一延(延居)、中村憲一、野部明敬、藤本ひろみ、森尾秀基(ひでかず)、吉松峰夫(舞九)
投句数:3句  兼題:「冬木」または「おでん」(いずれも傍題を含む)
講師選評 安西 篤(俳句結社「海原 KAIGEN」主宰)

【特選】

被爆者の声の重さやオスロ冬 赤池 秀夫

ノーベル平和賞に輝いた日本被団協代表のオスロでの挨拶の声を詠んだ句。挨拶スピーチは、被爆の現実を訥々と伝えていたが、それが返って内容の重さを感じさせるものだった。その率直な感動をあるがままに詠んだところがいい。こういう句は衒いなく素直に詠む方が、感動をストレートに伝えるものだろう。折しもオスロは冬の最中にあったのも、句に重みを加えた。

【並選】

(一位)

親友とも逝きて喪に服す夜のおでん酒  千原 延居

作者の年齢を考えれば、身近な友はきわめて寥々たるものだろう。喪に服す日々は引きも切らず訪れるに違いない。その実感を素直に詠んでいる辺りが、特選句同様かえって感銘を呼ぶ。おでん酒は、ひとり屋台で故人を偲ぶ時間を求めたもの。

(二位)

戦火果てず巡る生命や冬木立  清水 星人

冬木立の中をひとり歩いている時に、ふと訪れた感慨。ウクライナの戦火と、そこで命を落としている人々に思いをはせて、いつまた同じ運命に晒されかねないわが身や身近な人々の身の上を思う。冬木立の季語が上中の思いに寄り添っている。

(三位)

冬木道ベレーの似合う人と居て  吉松 舞九

冬木道を散策中、たまたま旧友と出会い、とあるベンチに腰かけて少しばかり話し込む。その人のかぶっていたベレー帽が不思議によく似合っていて、束の間の点景となつたことに安らぎを覚えている。「ベレーの似合う人」が、意外に洒落ていて粋な点景となったようだ。

(四位)

皆肩をすぼめおでんを待ち侘びて  梶原 由紀

寒さの中、評判のおでん屋の行列に加って順番を待ち侘びている。誰しも寒さに肩をすぼめて、語り合うこともない。この着眼が効いている。寒さがひしひしと身に迫り、平凡な庶民の暮らし感覚がもろに出た句。

(五位)

三品を選ぶおでんやランチ時  野部 明敬

前句に続くように、順番が来ておでんを買い求める場面。あらかじめ列の中から目がけていたものを確かめるように、すばやく三品を選んだ。ちょうどランチ時で、腹の虫の高鳴りを抑えながらの感じが三品に込められる。

(六位)

下戸の卓もっぱら菜となるおでん  押山うた子

ごく当たり前の景をそのまま詠んだ句だが、いわれてみるとそうだったと腑に落ちる。下戸だっておでん屋に行き、酒も飲まずにもつぱらおでんだけを食うことはあるさ。力みかえるもなく、もつぱら自然体の開き直り。

(七位)

照紅葉法華寺菩薩唇くちの艶  森尾ひでかず

法華寺は天平の総国分尼寺。そこに祀られている御本尊菩薩の唇は、形よく柔らかに結ばれ、照紅葉に映えて艶やかに光る。「唇の艶」が、まさに艶なる風情。すでに類想はありそうな句だが、菩薩の艶を多としたい。

(八位)

コンビニのレジの横からおでんの香  佐竹茂市郎

たしかに最近はコンビニのレジの横辺りに熱々のおでん鍋がしつらえてある。おそらく管理上の必要からそうなったのだろうが、ついでに買っていくかという気にさせられる。今や見慣れた風景ではあるが、冬場の旬の匂いがたまらない。

(九位)

踏切を待つ間の匂いおでんかな  中村 憲一

踏切で電車の通過を待つ間におでんが匂うのは、おそらく踏切に立っている人の群れの中に、おでんを買った人がいて、その手持ち荷から匂い立ったものだろう。なにやら、ついで買いを誘うようなひと時。

(十位)

冬木立オスロで語る被団協  内田 博司

言うまでもなく、今年のノーベル平和賞受賞の被団協の代表が、原爆被爆の悲惨さを証言し、原爆廃絶を訴えたことを句にしたもの。特選句で同じ題材を頂いているので、十位とした時事句。

【選者自句自解】

いつよりか斜に歩きおり大枯野  安西 篤

果てしない大枯野の中の道なき道を歩いていると、いつの間にか真っ直ぐとはいかず、斜に歩いていることに気づかされる。大枯野のような道なき道は、どんなに正確を期していても、実は斜に歩いてしまい、本来の目的の地点を見失いがち。それもかなり歩いてから、もはや引き返しも軌道修正もままならぬ危機感を書いてみた。

以上

◆講師(安西 篤)詠 3句

常連の姿の見えず夜のおでん

冬木立伝い尋(と)むるも兜太留守

いつよりか斜(しゃ)に歩きおり大枯野

◆十二月句会 高点句

(同点の場合は番号順)

【最高得点句・九点】

被爆者の声の重さやオスロ冬  秀夫

【その他の高点句・七点~六点】

戦火果てず巡る生命や冬木立  星人

シャッターを降ろす猫背や冬落暉  由紀

冬木立伝い尋(と)むるも兜太留守  篤

小銭出す皹ひび割れ指のもどかしく  憲一

襟立てておでん屋台の椅子の端  泉舟

【その他の高点句・六点~四点】

雪吊りの引き合う綱の程の良さ  星人

碧空に血脈描き冬木佇つ  泉舟

照紅葉法華寺菩薩唇の艶  ひでかず

いつよりか斜しゃに歩きおり大枯野  篤

親友とも逝きて喪に服す夜のおでん酒  延居

たそがれの冬木や吾に克己心  由紀

◆2025年1月以降について

★1月は以下の通り対面句会を行いました。 
日時:1月24日(日) 13:30~16:30
場所:本多公民館 
兼題「年末・年始の季語一切(いずれも傍題を含む)」

★2月は以下の通り通信句会となります。

投句締切 2月10日(火) 3句

兼題: 「春浅し」または「早春」(いずれも傍題を含む)

以上