俳句同好会(国分寺句会)の2024年10月例会が通信句会方式で開催されました
参加者は以下の14名でした。
出席者氏名;安齋篤史(俳号 安西 篤・講師)、赤池秀夫、内田博司、押山うた子、
梶原由紀、佐竹茂市郎、清水 元(星人)、眞宅康博(泉舟)、千原一延(延居)、中村憲一、野部明敬、森尾秀喜(ひでかず)、吉松峰夫(舞九)
以上14名
欠席;舘 外博(爽風)
投句数:3句 兼題:「秋麗(あきうらら)」(傍題を含む)
講師選評 安西 篤(俳句結社「海原 KAIGEN」主宰)
《 》内は講師の添削
【特選】
切りの無き妻の繰り言そぞろ寒 吉松 舞九
たしかに妻の繰り言は、うんざりするほど切りもない。しかし振り返れば、その一半は夫たるおのれ自身が作り出しているのかもしれず、「そぞろ寒」の思いの中には、そんな自分自身へのやりきれなさがないまぜとなっているに違いない。曽野綾子もいうように、人間誰しも最後は負け戦だから、そのことを認めていなければ、最期はつらいものになるという。妻の繰り言もその過程として聞きおくしかあるまい。今さらのようにそんなリアリテイがこの句にあるのは、作者自身の吐息のように感じられるからだ。
【並選】
(一位)
起き伏しをヨイショで区切り暮の秋 中村 憲一
日々起き伏しの挙動を、時々区切りよくヨイショと声を掛けてメリハリをつけるのも、老いてからの生活のリズム感に乗せるのに有効ではないか。家人は何事が始まったかと思うかもしれないが。暮の秋の季節の変化にも対応して、いい気合がはいったことになる。
(二位)
秀麗や切子に注ぐ京土産 梶原 由紀
江戸切子の無色または淡彩の器に、京土産の酒を注いで飲むという趣向だろう。江戸と京都の文化の照り合わせが、秀麗な日に一段と映えて、酒が一層美味しくなる。いかにも旨そうな感じと、土産の心映えが嬉しい。
(三位)
秋うららシニアばかりの講習会 吉松 舞九
最近生涯学習の講習会が盛んだが、受講者のほとんどはシニアばかり。現役世代にには時間的余裕がなく、シニアには情報が少ないから、そういう結果になるのだが、ここではそのことの是非は問わず、それも一つの秋うららの景として詠んでいる。その判断は読者に投げ返されている。
(四位)
庭園に同期の円座秋うらら 清水 星人
秋日和の日に、とある庭園で同期会を行う。ひさしぶりの集いに。話も盛り上がり、時のたつのも忘れるほどの秋うららの一日であった。いつまで続けられるかの危うさを感じながらも、せめて今を精一杯楽しめたという満足感に満たされている。
(五位)
秋日和バス停ひとつとばしけり 藤木ひろみ
地方の交通を担うバスも、最近は過疎による乗客減で、バス台数の減少や臨機のバス停とばしもあるようだ。それが地方交通の合理化の一端とあらば、やむを得ない面があるのかもしれないのだが。悲しい現実だ。
(六位)
白杖の行く手色濃き紅葉かな 押山うた子
年とともに目が不自由になって、今は白杖を突きながら道をたどる。折しも行く手に、目も鮮やかな紅葉が色濃く付き始めたという。残念ながらその絶景は、周りの人々から伝え聞くしかない。その淋しさは伝えようもないのだが。
(七位)
理髪師に歳をきかるる敬老日 赤池 秀夫
近頃めっきり増え始めた白髪を気にしていたら、行きつけの理髪店で歳を聞かれた。一瞬嫌なことを聞くなと思ったが、そう見られる現実は受け入れざるを得ないかと思い知らされた。そしてあらためて、敬老日とは何かと思うようになった。
(八位)
秋うららリハビリの道靴軽し 千原 延居
秋のうららかな日、リハビリへ行く道のりは楽しい。身も心も軽やかな気分で、これがささやかな幸せというものと自分に言い聞かせる。家人に対しても機嫌よくふるまえる一日の冥加というものだ。
以上
講師(安西 篤)詠 3句
秋うらら兜太の尿瓶長靴型
この上の試しに耐えて能登の秋
吾(あ)にもある残んの日々や秋うらら
10月句会 高点句
(同点の場合は番号順)
★最高得点句・8点
色の無き風に痩せゆく石仏 舞九
★その他の高点句・6点
秋うらら兜太の尿瓶長靴型 篤
白杖の行く手色濃き紅葉かな うた子
きしきしと秋茄子洗ふ指の先 明敬
★その他の高点句・5点~4点
行く秋や音なく落ちる砂時計 ひでかず
草刈ってようやく庭の秋日和 博司
吾にもある残んの日々や秋うらら 篤
切りの無き妻の繰り言そぞろ寒 舞九 以上
11月以降の予定
11月は以下の通り対面句会を行います。
日時:11月24日(日) 13:30~16:30
場所:本多公民館 会議室2
兼題「石蕗の花(つわのはな)」「木の葉髪」
以上