俳句同好会(国分寺句会)の7月例会が開催されました。

俳句同好会(国分寺句会)2024年7月例会が通信句会形式で開催されました。

投句締切 7月10日(水)、選句締切 7月22日(月)

今月の兼題: 向日葵(ひまわり)

今月、通信句会に参加したのは以下の14名でした。

参加者氏名;安齋篤史(俳号 安西 篤・講師)、赤池秀夫、内田博司、押山雅子(うた子=投句のみ参加)、梶原由紀、佐竹茂市郎、清水 元(星人)、眞宅康博(泉舟)、千原一延(延居)、中村憲一、野部明敬、藤木ひろみ(選句のみ参加)、森尾秀喜(ひでかず)、吉松峰夫(舞九) 以上14名

欠席;舘 外博(爽風)

講師選評 安西 篤

【特選】

向日葵や老いの車を老いが押す   吉松 舞九

 いわゆる老々介護の日々を詠んでいる句。向日葵には、「日車」という別称もある。掲句は、向日葵畑の道を車椅子に乗せて、連れ合いを散歩させている景だろう。高齢者の多い地方の中都市郊外でよく見かける景だ。久しぶりの晴れた外気に触れて、気持ちよさそうにしている老妻の顔を、満足げに眺めている作者の気持ちも晴れやかで、大輪の向日葵に揺さぶられているよう。中七下五の現実感が今さらのように切ない。

【並選】

(一位)

絵日記のひまわりの顔孫の笑み   清水 星人

 孫の描いた絵日記の中に、大きなひまわりが描かれている。その絵の出来栄えに、孫が満足してにっこりしたのかも知れないし、或いは向日葵の絵の傍に、ひまわり同様の笑顔を見せている孫の顔が描き添えてあるのかもしれない。その受け取り方は読者に委ねられているが、どちらもありで、いいのではないか。

(二位)

向日葵の蜜採る亡夫(つま)の眼裏(まなうら)に    押山うた子

 亡夫は生前、よく向日葵から蜜を採集していた。その時の喜々とした姿が、今も眼裏に浮かぶ。その思い出は、さらに幻のように、さまざまな連想を呼んで、亡夫との日々を走馬燈のように回想させてくれる。それは若き日の亡夫との甘やかな思い出をクローズアップさせながら。

(三位)

向日葵やゴッホの絵にも狂い咲き  千原 延居

 地球猛暑の前書きがある。この前書きで句が生きた。向日葵はゴッホの名作の一つとされているが、あの絵には、どこか神経的鋭さを蔵しながらも、全体として温かみを感じさせる。ゴッホの向日葵は数点あるが、その中の赤い向日葵をこの場合想定したい。暑さに狂い咲きしたと見たことで、ゴッホの生涯が生かされたのだ。

(四位)

ひまわりや生徒ふたりの無人駅   梶原 由紀

 過疎の私鉄の無人駅。駅舎の傍らにひまわりがひっそりと咲いている。通学する生徒が二人いて、電車の来るのを待っている。ひまわりだけが生徒たちを「行ってらっしゃい」と見送っているかのよう。淋しさの中に、向日葵の健気な姿が明るさを灯す。

(五位)

蚊帳の香の遠き記憶や母の歌    清水 星人

 今はもう使われることもなくなった蚊帳も、昭和時代は必需品だった。夜、母の子守歌を聞きながら、蚊帳の香りの中で寝入った日々が忘れられない。香と歌の取り合わせがよく響き合う。

(六位)

ガラス戸の守宮の蹠撫でにけり   中村 憲一

 夏の夜、ガラス戸に守宮がやってきて、しばらく貼りついていることがある。そのきれいな蹠を、ガラス戸の内側から撫でてやると、守宮はじっと動かないで、なすが儘に任せてくれる。何か通い合うものを感じたのだろう。その見立てがいい。

(七位)

ひまわりや種であそんだ昭和の日  内田 博司

 この「昭和の日」は、祝日ではなくて昭和時代を含意していよう。子供の頃は、向日葵の種で五目並べをしたり数を数えたり、用が済んだら齧ってみたりして楽しんだもの。古き良き時代の必需品だった。

(八位)

白シャツや新たな駅で六十半ば   森尾ひでかず

 句の焦点は加齢感にあるのだから、「還暦も過ぎて白シャツ新駅で」と逆転して捉えてはどうか。その年になって新たな生き方で行こうとする思いが焦点のはず。

(九位)

向日葵や道まっすくに開拓地    赤池 秀夫

 向日葵が道しるべのように道端に立っている。あたかも、この道をまっすぐ行けば開拓地ですよとばかり。向日葵のしっかりした立ち姿に、信頼感も見えて。

(十位)

被災地の庭に向日葵独りたつ    眞宅 泉舟

 津波の被災地で、家は跡形もなくなった庭に、向日葵の花がポツンと独り立っている。その姿に、ここに家ありきと云わんばかりの存在感がある。被災地の庭の設定がリアル。

以上

7月句会の高点句 (同点の場合は順不同)

最高得点句・十点

ガラス戸の蹠(あうら)撫でにけり                 中村 憲一

その他の高点句・六点~四点

ひまわりや生徒ふたりの無人駅        梶原 由紀     

半夏生能登の塗椀掌に包み               安西 篤       

向日葵の蜜採る亡夫(つま)の眼裏(まなうら)に         押山うた子     

向日葵や道真っすぐに開拓地         赤池 秀夫     

蚊帳の香の遠き記憶や母の歌         清水 星人     

向日葵の蒼天を背に毅然たり         眞宅 泉舟     

向日葵や老いの車を老いが押す        吉松 舞九   

国分寺句会 今後の予定            

8月句会(対面句会)

日時: 8月24日(土)午後1時半~4時半

場所: 本多公民館 会議室2  

                          以上