俳句同好会(国分寺句会)1月例会(第130回)
俳句同好会(国分寺句会)の2026年1月例会が1月25日(日)13時00分から対面句会方式で開催されました。
当日の参加者は講師の安西 篤先生始め7名、欠席投句の6名を含め合計13名の句会となりました。
年の初めのため、お昼の弁当食べお酒を少々飲みながらしばし歓談。ただ、欠席者も多く少し寂しい句会となりました。
出席者氏名:安齋篤史(俳号 安西 篤・講師)、内田博司、梶原由紀、眞宅泉舟、野部明敬、吉松舞九、森尾ひでかず
以上7名
欠席投句:押山うた子、佐竹茂市郎、清水星人、千原延居、中村憲一、藤木ひろみ 以上6名
欠席;赤池秀夫、舘外爽風
投句数:3句 兼題:「年末・年始の季語一切」(いずれも傍題含む)」
講師選評 安西 篤(俳句結社「海原 KAIGEN」主宰)

◆2026年1月 国分寺句会講師選評
【特選】
楪や濡れたばかりの涎かけ 森尾ひでかず
楪は、新しい葉が成長すると古い葉が譲って落ちるのでこの名があるところから、葉を新年の飾り物用に用いられている。(以下は筆者の想像である。)
お正月用に楪を飾った我が家に新生児が生れた。作者にとっては、孫の誕生ということなのかもしれない。愛らしい赤子の固く握られた手を、そっと持ち上げながら、「チョウチチョウチアワワ」などと戯れている。孫をあやしながら、自分も楽しんでいるのだ。そのうち孫の濡れたばかりの涎かけにすっかり手を濡らされても、おお元気なことと褒めそやす。なにもかも楪の目出度さに覆われた年の明け。
【並選】
(一位)
初空や人生は旅車椅子押す 清水 星人
初空は元日の淑気のなかの空をいい、初御空ともいう。やはり年あらたまる気配の中の初空は生気に充ちて、ことのほか晴れやかな気分に誘われる。病む妻を車椅子に乗せて初旅に向かえば、人生の旅路も明るく開け行くようにさえ感じられて、車椅子も軽やかに始動するのではないか。
(二位)
筆圧に込める野心や初日記 梶原 由紀
新年はじめての日記をつけるとなれば、最初の頁にペンをおろすとき、心地よい緊張感が奔る。同時にこの年に賭けるさまざまな野心もふつふつと湧いて来て、勢いその抱負を書く時の筆圧が一段と強まるのも道理であろう。それもまた筆者の若さの照り返しでもあるのだが。
(三位)
待ち人は黄泉路を辿る初みくじ 吉松 舞九
初詣で初みくじをひくと、待ち人欄にいろいろと書かれているが、自分にとっての待ち人は、すでに黄泉路を辿っていて、この世では待つに由なき有様。むしろあの世での待ち人こそ、作者にとつての待ち人なのであろう。作者は他に「初夢の昔の仲間みな達者」と書いている。夢に出てくる仲間は皆元気な姿なのだ。
(四位)
癌告知生かされている去年今年 眞宅 泉舟
癌の告知を受け、余命幾許かの思いに迫られながら、不思議に生かされている去年今年の日々。「生かされている」思いは、余命を愛おしむ思いにつながり、有難しかたじけなしとも思う。作者は、「春永にことよせ交わす祝い酒」という句もモノしているから、せめて今は、生かされているいのちを、寿いでゆこうという気持ちに違いない。
(五位)
初御空宵寝夫婦の顔照らす 千原 延居
新年を迎えても、老夫婦にとっては寝正月こそ最良のものと決め込んで、初御空といえども宵のうちから寝込んでいる。初御空の空の輝きは宵寝夫婦の顔を照らし出していて、いかにも幸せそうな表情だ。作者には「帰り花無事退院の妻迎う」の句があり、その喜びの余韻が、初御空の句に響き渡っているのではないか。こういう句には、順位を付けるに忍びない気がしてくる。
(六位)
母の味凍り蒟蒻真似て煮る 押山うた子
凍り蒟蒻は茨城県奥久慈地方で作られる食材で、蒟蒻をフリーズドライした食材。凍結と解凍を繰り返したコリコリした食感が楽しめるという。作者は母譲りの調理技術を習得しておられるのだろう。掲句はこの食材を案内しただけの句だが、なんといっても「母の味」で、「凍り蒟蒻」(凍み蒟蒻ともいう)なる風土色豊かな食材という特色で押し切ったところが決め手になった。
(七位)
新年のたづくり堅し余命の日々 内田 博司
「たづくり」はごまめの異称で、鰯類が田の肥料になるところから、正月の祝肴に用いられる。自分にとっての余命の日々も、新年のたづくりの堅さによって、一層健やかに長かれと祈る思いを寄せた一句といえる。
(八位)
年の夜や手荒れ見つめてそば湯のむ 藤木ひろみ
大晦日の夜(年の夜)、この一年の間、「働いて働いて働いて働いて働いて」と、どこかで聴いた風な科白そのままに働きづめだったせいか、すっかり荒れた手を見つめ、年越しそばのそば湯をゆっくりと飲んで一息ついている。年越しのひと時。
(九位)
自らを灯として生きよ初暦 野部 明敬
この句は、おそらく年初に際しての所感のようなものではないか。これからの初暦の一枚一枚を引き裂いてゆく毎に、否応なく老いてゆく。「自らを灯として生き」れれば、云うことはない。だから自分に「生きよ」と発破をかけているのだ。作者はそれで納得できたとは思えないのだが。意外にこの問いは厳しいものかもしれない。
(十位)
始まりも終りも礼の初稽古 佐竹茂市郎
作者は、剣士としての修行を積んでおられるのかもしれない。剣道の修業は、礼に始まり礼に終わると聴いたことがある。いつもの初稽古も同じことを繰り返しつつ、終わりなき修行に励んでおられるのだろう。
以上


◆講師(安西 篤)詠 3句
初荷かな駅伝ランナー倒れたる
初東風をまといて里の宅急便
若水に縄文の馬揺れ止まず
◆2026年1月 国分寺句会高得点句 (同点の場合は番号順)
最高得点句・八点
待ち人は黄泉路を辿る初みくじ 吉松 舞九
その他の高点句・七点
楪や濡れたばかりの涎かけ 森尾ひでかず
初空や人生は旅車椅子押す 清水 星人
筆圧に込める野心や初日記 梶原 由紀
六点句
永らえて小志なお追う去年今年 清水 星人
始まりも終わりも礼の初稽古 佐竹茂市郎
五点句
初軍鶏の雄叫び高く声長し 押山うた子
母の味凍り蒟蒻真似て煮る 押山うた子
春永にことよせ交わす祝い酒 眞宅 泉舟
年の夜や手荒れ見つめてそば湯のむ 藤木ひろみ
以上

